2005年末にNHK地球ドラマチックで放映された「ブレインマン」を見られた方も居られると思う。その数学と語学の”天才”の英国人ダニエル・タメットの著書「僕には数字が風景に見える」を読み、天才の栄誉の影に、人とのコミュニケーションに障害を持つ著者の苦しみ、葛藤と、家族や友人の愛情に包まれ少しずつそれを乗り越え自立し社会と共生し、自分と同じような障害を持つ人々を助けようと活動する著者の勇気ある行動に感銘を覚えた。
1から10、000までの数字の一つ一つが個性を持ち、独自の色や形を持つ、長い数式も数字のつながりが美しい風景に見え、一瞬の間に計算結果が分かってしまう能力がある。サヴァン症候群と言い非凡な才能と脳の発達障害を持つ人々が居るが、著者も映画レインマンで有名になった米国キム・ピークもそれに属する。また著者はアスペルガー症候群の障害も持つ。
自閉症とよく似たアスペルガー症候群、どちらも共通する中核的な症状がある。
①人の心の動きがよく分からないので、対人関係が上手にとれない。
②ひとつのことに強くこだわり、新しいことがらや環境をなかなか受け入れられない。
著者は小さな頃から人との関わりがうまく行かず普通の人が何気なく出来る日常の行いもうまく行かなかった。保育園や学校にもなじまず友人も出来にくいという孤独と苦痛の暮らしだったが、家族の献身的な愛情に包まれ育っていった。高校を卒業して英語教育のボランティアでリトアニアに一人で旅立つ。話は変わるが、こういう障害者もボランティアに起用する英国団体の懐の深さにも感じ入る。大変な努力で不安と緊張を乗り越え、見知らぬ人と交わることを覚えてゆく著者の行動は感動的だ。海外で暮らし、英語を教えるコツを自覚することにより、欧州のさまざまな語学(フィンランド、フランス、ドイツ、リトアニア、エスペラント、スペイン、ルーマニア、アイスランド、ウェールズ)を自習し話せるようになる。彼のHPではフランス語とスペイン語を優しく覚えられるプログラムを手ごろな費用(1コース25ドル)で提供している。
詳しいことは本を読んでもらえば分かるし、いろんな書評にも紹介されているので繰り返さない。僕がここで言いたかったことは、自閉症の方々は人との関わりが難しいという障害を持っているが、本人の適性に応じた仕事では人並み以上の能力を発揮することがある。自閉症の方々の就職では試験や面接ばかりでは能力を見極めることが難しい。本人をよく知った方々の紹介から試用期間を経て本人を理解するという、障害者に対する社会の理解が深まればもっと活躍の場が得られるのではないかということである。著者も障害に対するわだかまりを持たぬ友人達の支えで友情を知り、愛を知り、神への信仰も深めて行く。健常者と何の変わりも無いことを本書を通じよく理解できる。著者は最後に聖書のコリント人の手紙の一節を引用している。仏教の経典にも共通する表現があるように思われるが、こんな素晴らしい言葉を教えてもらってありがたいと思う。
愛は寛容にして慈悲あり。愛は妬まず、愛は誇らず、驕らず、非礼を行わず、己の利を求めず、憤らず、人の悪を念わず、不義を喜ばずして、真理の喜ぶところを喜び、凡そ事忍び、凡そ事信じ、凡そ事望み、凡そ事耐ふるなり。愛は長久までも絶ゆることなし。げに信仰と希望と愛と、この三つの者は限りなく存らん。しかしてそのうち最も大いなるは愛なり。
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