オバマ大統領の就任演説を朝のTVニュースでちらっと見て、それからNY Timesのビデオ版で20分じっくり見た。そして英文全文をダウンロードし何度も何度も読み返した。こんなことしてて仕事が手につかなかった筈だが、まあ合間合間に。
やはり彼の演説は目で原稿を読むより、You Tubeなどで見て聞いた方がずっと感銘を与える。それは2004年の民主党大会の基調演説でもそうだし、選挙後の勝利宣言でもそうだった。今回は別の意味でそうであった。
昨日までのメディアの論調ではオバマ大統領の就任演説がJFKのそれや、もっと遡ってリンカーン大統領のゲティスバーグでの演説に比肩するものかと騒がれていた。文章としての格調の高さ、比喩のうまさ等では、やはりケネディー大統領のそれが優っているのではというのが米国批評家の一般的な見解のようだ。だが、現在の米国、いや世界経済の深刻さは、レトリックで言い表せる限界を超えており、だからこそオバマ大統領は終始謹厳な厳しい調子を崩さなかったのではないだろうか。
彼の前には何十万人もの観客が控え、世界各国の民衆がTVで演説を熱心に聴いている。彼は全体的には校長先生のような生真面目な調子で語りかけながら、アメリカの歴史を支えてきた故人たちの献身を語るときや貧しい人に問いかけるときには詩人のように生き生きとリズムを持つ言葉で話しかける。英語が不得意と言う人にもその調子は十分伝わると思う。
彼の課題は国際的にはテロリズムとの戦い、国内的には経済の建て直しだが、聴衆は真剣に彼から経済の具体的方針を求めていたのではないだろうか。僅か20分の時間では具体的な内容には触れられないが、ブッシュ政権下の金持ちがますます豊かになるシステムを「富者を引き立てるだけでは、国は長く繁栄できない」と痛烈に批判し、「私たち公金を扱う者は賢明に支出し悪弊を改め外から見える形で仕事をするという説明責任を求められている」と彼の政府の基本姿勢を約束した。
そして「私たちは今日から自らを奮い立たせ埃を払い落としてアメリカを再生する仕事をもう一度始めなければならない」、「私たちは行動する。新たな雇用を創出するだけでなく、成長への新たな基盤を築くためだ」と約束する。前政権と異なり、外に明らかな敵を見据えて国民の結集を求めない。敵を非難しないことにより、より広範な力を結集させようと努めている。なぜなら「経済状況は力強い迅速な行動を求めている」からだ。
更に国民の協力を求めて「今私たちに求められているのは、新たな責任の時代だ(A new era of responsibility)。それは一人ひとりの米国人が私たち自身や我が国、世界に対する責務があると認識することだ」と訴えかける。ケネディー大統領の「国家があなたに何をしてくれるかと問うのでなく、あなたが国のために何を出来るかを問おうではないか」と比べられる程の格調の高さがあると思う。
今回のオバマ大統領就任演説は何十年後にその文章、レトリックの素晴らしさで引用されることは少ないかもしれない。だが、困難な現実に直面し、分かり易く率直に国民に全力を出して再建に取り組もうと呼びかける力強さと米国建国の先人の例に学び米国を作り直そうとする謙虚さと気高さによって回顧されるのではないかと考える。まさに彼がシカゴの貧民街の再建で培ってきた強さではなかろうか。
写真はNYタイムズから、演説和文は朝日新聞から引用。
最近のコメント